『つづくで起こったこと〜ミナペルホネン/皆川明つづく展93日の記録』から考える画像デザインのこと
画像クリエーターの茜です。
このサイトではデザインに役立つ本もご紹介しています。
本日は私の敬愛するミナ ペルホネンというブランドの皆川明さんというデザイナーさんの著書について私の思いを書いてみたいと思います。
ご紹介する本は、2019年11月16日から2020年2月16日まで東京都現代美術館で開催された「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展の会期中に行われたイベントを収録したドキュメントブックです。
*この展覧会は兵庫県立美術館に2020年7月3日(金)—11月8日(日)に巡回しました。コロナウィルスの影響で会期が変更になりました。
皆川明さんのこと
【皆川明さんとは】
1967年東京生まれ。ファッションデザイナーで1995年に「minä perhonen」 の前身である「minä」を設立。
生地の産地に足を運ぶことから始まるオリジナルデザインのテキスタイルによる服作りが特徴。
家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど、日常に寄り添うデザイン活動を行っている。
【ミナ ペルホネンの由来とは】
出典:minä perhonen ホームページ
オリジナルの図案によるファブリックを作るところから服作りを進める。国内外の生地産地と連携し、素材開発や技術開発にも精力的に取り組む。ブランド名は、デザイナーが北欧への旅を重ねる中で、そのライフスタイルやカルチャーに共鳴し、フィンランドの言葉から取った。
「minä」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味する言葉。蝶の美しい羽のような図案を軽やかに作っていきたいという願いを込めている。
ブランドロゴは、「私(四角)の中のさまざまな個性(粒の集合)」を表す。蝶の種類が数え切れないほどあるように、デザイナーの生み出すデザインもまた、増え続ける。
青山のスパイラル5階にとミナ ペルホネンによるセレクトの店「Call」と「家と庭」というカフェがあり、そこでミナペルホネンのデザインを体感することができます。
運がよければ皆川明さんをお見かけすることもあります。
一度遠くから拝見しましたが憧れがすごすぎて、とてもお声はかけられませんでした。穏やかで優しげな印象がありました。
茜クリエーター
小学校のときの教科書に皆川さんが載っていたのでミナペルホネン知っていたよ。
音クリエーター
この本は皆川明さんの展覧会期中のことが記録されている
私のプロフィールにも書いてありますが、私の20代は展覧会を企画し運営する美術館学芸員でした。
展覧会はアーティストの作品の完成形が展示されます。そこに至るまでの舞台裏の過程は表に出ることはありません。私たち学芸員は裏舞台で生きる人々です。でもその裏舞台こそが面白い。表に出て来ない、または出すことのないたくさんの事柄が隠されています。それに加えて、ひとつの展覧会をつくりあげていくなかで、たくさんの人間と関わり、たくさんの思いが展覧会の中にあるのです。
「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展では、デザインの完成形ではなく、思考からプロセスといった、普段表に出ることのない仕事を一堂に展示しました。
出典:『つづくで起こったこと〜ミナペルホネン/皆川明つづく点93日の記録』
皆川明さんは消費されるものではなく、
いろいろな人の手を介して繋がりながら続いていくことや、人と人との想いを繋いでいくこと
を大切に考えられていることがこの本で読み取ることができました。
それを読んで私は胸に迫るものを感じさせられました。
よりスピードアップしている時代
この展覧会に私たちは家族で出かけていきました。
圧巻だったのは森というゾーンの「洋服の森」です。
ここには400着以上の服を制作年代も関係がなく展示していました。
これってすごいことです。
たいていは年代順に展示されて、その過程をみせるのが展示の手法。
皆川さんはあえて最新の服も過去の服も織り交ぜることによって、その価値に変わりはないことを示したかったと会場マップに書かれていました。
それを証拠づけるように、土というゾーン「洋服と記憶」では、服とその持ち主のエピソードを紹介しながら、色褪せることのない持ち主の一部になっていった服を見せていました。
10数年前にお母さんが着ていた服を死後に譲り受けて、その服を着るとお母さんを思い出すという持ち主のエピソードに泣きそうになってしまいました。
エピソードを読みながら展示されている服をみるとじんとしました。服の展示をみているというよりは、持ち主の思いを体感している感覚になったからです。
本当に感銘を受けました。母から子へ引き継がれたミナの服は、デザインも素材も傷むことなく今に十分通用するものばかりだったからです。
それまでの私は服は流行もあるし、布地も傷んだり色褪せてしまうから服は古くなったら捨てるものだと思っていました。
たぶん皆川さんはそうではなく、デザインがずっと持続していくものづくりを目指しているのだと改めて感じさせられました。
ぶどうがワインになるように、始めは洋服だと思っていたのにいつの間にか思い出に変わって、それを手にすると自分の人生を感じることができる。
出典:『つづくで起こったこと〜ミナペルホネン/皆川明つづく点93日の記録』
時代は5Gとか、流行とかどんどん流れがスピードアップしていますが、その中であえて手間のかかる素材を見つけるところから始める、素材をどのように組み合わせるか考えるという時間の経過を大切にする気持ちを持つ皆川さんの考えをこの本から知ることができました。
スピードが早ければいいというわけでもなく、ゆっくり進むことでいいものがつくれるのだということに私も大きくうなづきました。
画像デザインを考えると
私の携わる画像デザインはブログやSNSで使われることが多いですが、絵画のような時間をかけてつくるものではありません。できれば時短で効果的に作りたいと考える人も多いでしょう。
だからこそ、Canvaというデザインツールのテンプレートがたくさんあるものからおしゃれで簡単に作るという人が多いのです。
私もその一人でしたが、できるだけオリジナルのテイストをいれるようにしています。
本当はデジタルで絵を描いて完全オリジナル画像につくりたいけれど、ものすごく時間がかかってしまいます。一部オリジナルをいれることは私の楽しみになってきています。
ピンタレストでは検索エンジンが同じような画像をおすすめしてくるのですが、オリジナルを入れるようになってから、どこかで見たような同じようなデザインが出て来なくなりました。
そう、私の画像デザインが私だけのオリジナルになってきたからです。
皆川さんのデザインの考え方にひとつのデザインの中にそのデザインを使う人の何かが入ることによって、完成するというのが私も強く同意します。
Canvaのテンプレートをそのまま使うのではなく、そこに自分のオリジナルのものをいれてみることで私のデザインがきちんと完成しています。
『つづくで起こったこと〜ミナペルホネン/皆川明つづく点93日の記録』は、
- デザインは楽しい
- デザインは自由
- デザインは過程
ということを改めて教えてくれた私にとって大切な本となりました。
▼よかったらぜひ読んでみてくださいね!▼
私のワークショップではCanvaを使って画像を簡単に作る方法を勉強できます。テンプレートを利用しながらご自分のオリジナルも使うこともできますよ。ご興味がある方はぜひ覗いてみてくださいね。
ピンタレストに役立つ画像作りのポイント