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絵が好きだけど描けなくなった私へ贈る『かくかくしかじか』

    
かくかくしかじか
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絵が好きだけど描けなくなった私へ贈る『かくかくしかじか』

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告白します。子供の頃、私は絵を描くことが好きでした。

でも、進学や就職の時に

  • 絵で食べていけるわけがない
  • 働くことで独りで生きていける力をつけて欲しい

と、親から言われ、反抗して選んだ進学先は芸術系、就職先は、皮肉にも絵と関わる仕事の美術館勤務。

美術館では、一流アーティストの絵を観て、自分には本当に才能がないんだなと失望しました。

ところが…

美術館勤務をやめてからは、インテリアの仕事でパースを描くように。

結局、絵を描くことからは離れられませんでした。

でも、それはあくまでクライアントありきの絵で、描きたいものは描けなくなっていました。

今日は、絵を描かなくなってから出会った漫画『かくかくしかじか』について、ご紹介したいと思います。

『かくかくしかじか』は東村アキコさんの自伝漫画

『かくかくしかじか』は、漫画家の東村アキコさんの自伝漫画です。

【あらすじ】
宮崎の田舎で育った主人公・明子は、自分は絵がうまいと思い、美大に進学して、漫画家デビューすることを夢見ていた。
美大受験を選んだが、試験の内容も知らなかった明子が友人に誘われて、絵の教室に行く。
そこで出会ったのは剣道の竹刀を持って、「描け!」というスパルタの日高先生。明子は、推薦にも落ちるが、なんとか地方の美大に入る。
絵を好きに描ける環境を手に入れたはずなのに、全く描けずのモラトリアム大学生活を経て、故郷の宮崎へUターン。そこで、日高先生の教室を手伝いながら、コールセンターの業務をこなすうちに漫画を描きたくなってきて…。

東村アキコさんの自伝的漫画。
『Cocohana』(集英社)2012年1月号から2015年3月号まで連載された東村さんが回顧する青春時代と師の日高先生のこと。

実は美大受験漫画だと思ったのですが、絵を通しての先生と生徒との物語に泣けました。

『かくかくしかじか』に出てくる日高先生

「かくかくしかじか」に出てくる日高先生は、本当に実在した人物がモデルです。

モデルは、宮崎では有名な画家の日岡兼三さん。

日高先生は、月に5千円の月謝しかとらずに、熱血で絵を指導してくれるすごい方です。

時にそれは、度を超えた熱血指導でしたが、この絵画教室には美大を目指す高校生や浪人生、趣味で絵を描く様々な人も通っていて、日高先生はその両方に同じ指導をしているところが、漫画に描かれていました。

これは、本当にすごいことです。

美大受験の専門学校の費用(2024年)

入塾料年間授業料(6日コース)詳細情報
すいどーばた美術学院30,000円992,000円https://suidobata.ac.jp/wp/pdf/24gakuhi.pdf
代々木ゼミナール造形学校100,000円780,000円https://art.yozemi.ac.jp/kouza/ryoukin_tyu.html
河合塾美術研究所33,000円496,120円https://art.kawai-juku.ac.jp/kanto/admission/spc/

かなりの金額が相場なので、日高先生は、月に5千円という、ほぼボランティア精神で毎日のようにやってくださっていたのでしょう。

それに、受験生だけではなく、一般の絵を習いたい人にも厳しく指導するというのも、すごいことだと思います。(普通は、生徒が辞めたら困るので、楽しく絵を描かせるように指導するからです。)

日高先生の絵画教室には、先生が集めた本格的なデッサン用の彫刻が備え付けられていて、のちに主人公明子の恋人が宮崎の先生の教室にやってきたときに、自分もここで学べば5浪しなくてもよかったかもというくらい本格的な教え方であったということがわかります。

実際に、この絵画教室を出た卒業生はいろいろな方面で活躍している人も多く、日高先生の指導の素晴らしさが伺えます。

日高先生の指導は、東京ではお金を出せば簡単に受けられますが、地方では、受けたいと思ってもないので、受けることができないものでした。

地方美大受験者は、慣れない都会まで出て行って、予備校で学ばなければならなかったのです。東京に住んでいること自体が運が良いというのもわかる気がしました。

『かくかくしかじか』の出来事は、誰にでもある

誰もが思う、

楽して、得たい職業につくことができるか

これって、若い頃、考えがちなことです。

勉強が嫌いだからという理由で、美大進学を選べば、そのような考えの人は、辛いことに遭遇したときにまた逃げることになります。

そのことがこの漫画には、深く描かれています。

努力なしには描くことができないということには、若い時には気がつけない。

そんなときに、強制的に「描け」と言ってくれる先生に出会えたのは、とても幸運なこと。

私が最もこの漫画で感銘を受けたのは、主人公明子が日高先生の教えを大人になってから理解できたということ。

「描け!」と言ってくれる人

東村アキコさんは、描きたいものが見つからず、結局そのまま美大を卒業しました。

高校生の頃に、美大に入って漫画家になるという夢もかなえず、漫画を在学中に描くこともありませんでした。

失意で故郷に戻ってきても、日高先生は、そんな東村さんに、

「とにかく描け!」

と、言い続けるのです。

ずっと後に東村さんは、何も考えず目の前のものを描くということは、すっと描けるようになるための訓練だったということに気がつきます。

若い時は、同じことを繰り返す基本的な努力が嫌いなもの。

でも、その努力ができた人こそが、自分の表現をつかみとることができる。

日高先生はきっとそのことを知っていたからこそ、「描け!」と言い続けたのだと思います。

このことは、何か挫折した時に、やめてしまわず、とにかく目の前のことを行動ができる人になるための手段だったのではないかと私には思えます。

時に厳しい指導者は、そのときは嫌だと思っていても、あとからとても有難い存在と気がつくものです。

描けなくなった私へ

私は、美術館勤務で一流のアーティストの作品を見すぎて描けなくなりました。

その後に、インテリアの仕事につき、死ぬほどパースを描くことになります。

歳をとって、自由になって、残された時間に何をしたいかと思えば、絵やイラストを上手くなくても描きたい、残したいという気持ちです。

この漫画は、描けなくなった私へ、漫画の中の日高先生が私にも「描け!」と言ってくれているようにも思えます。

これからの人生では、自分のために絵を描いていこうと思っています。

まとめ

『かくかくしかじか』は絵を描くことの意味を見つけられる素敵な物語

地方出身者の美大受験の参考になる漫画

絵を描くことの素晴らしさを改めて感じさせてくれるすてきなお話

東京芸術大学への美大受験については、絵が大好き!藝大ってどんなところ?美術大学受験がわかる『ブルーピリオド』山口つばさ著もご覧くださいませ。

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